神様は正直しんどい

勝負事の願掛けは正直しんどい

吾輩は神である。
「神様」「仏様」その類である。

民たちは時に、生きる上で戦う事を強いられる。時代においてそれは形を変えた。

「勝負事」の願掛けも民たちはよく口にする。

代々神官を務めるアンパイコースのぼっちゃん神官には無縁の世界だ。しかし、助勤の巫女と重鎮巫女との格差は時に大奥に匹敵する近寄り難い世界でもある。それもまた勝負の世界なのであろう。しかし、何故神聖な社内であの者たちは休憩時間に菓子を食べながら愚痴をたらたら漏らしているのか。吾輩が聞いてなどいないと思っているのだろうか。しっかり吾輩の耳に入っておるぞ。

民も同様に各々の勝負事への願掛けをしに足を運ぶ。だが、中には正直しんどい願い事もあるのだ。

「センター試験で第一希望校に受かります様に！」

勉強せい。神頼みもわかるがまず自分を信じろ。

「ずっと好きだった人に告白します。上手くいきますように！」

頑張れー！　勇気出して！　ファイト！
としか言いようがない。

「首都高で走り屋に勝負を掛けられました。風になって来ます。勝てますように」

首都高でレースすんな！　どこの頭文字だ？

「サスケに参戦します！　制覇できますように」

あれは無理だ！　諦めろ！

「スマッ○ブラザーズでお兄ちゃんに勝てますように」

これ返り討ちにあって喧嘩になるやつだー。

「支店長に100倍返しをしてやりたいです」

絶対恥かくからやめとけ！　ドラマの真似はやめとけ！

「今からなけなしの一万円を使ってパチンコで勝負にでます。人生賭けてます。どうか確定祭りの大フィーバー起きますように」

それ吾輩と関係ある？！　デジャヴ感じるんだけど？！

「最近、自転車通勤を始めたのですが、決まって同じ時間、同じ通勤路で今流行りの自転車配達の女の子がやたら競り合って来ます。今のところ全戦全敗なので次は競勝てますように」

何故競り合う？　謎の闘争心。

「神様、今張り込み中なのですが、近々ガサ入れの許可が降りそうです。その際に決定的な物的証拠が押収できますように」

張り込み中に来んな！　現場戻れ！

「神様、警察数人に張り込まれています。ガサ入れされても隠した物が見つかりませんように！」

おまわりさーーん！　この人でーーす！

「物的証拠は押さえましたが、肝心のホシには逃げられました。勝敗は決まりましたが、決着が着きませんでした」

張り込み中にここ来るからだろ！　現場戻れ！　あと上手い事言おうとすんな、寒いぞ。

「今年のインターハイ優勝できますように！　せーの、よろしくお願いしまーーす！！」

練習して下さーーい！！

「自転車配達の女の子と三度めの勝負でようやく勝てました。そしたら女の子が「いいセンスだね」て声掛けて来まして、連絡先を交換しました。どうやら恋が始まったみたいです。神様の巡り合わせだったのですね。ありがとうございました」

いや吾輩一切関与しておりませんよ？　
まぁ、おめでとう！　意味わからん。

民の勝負事は終わりがない。
正直、しんどい。