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もしかして。
「宛名が娘へ、だったのって…」
「まだ美月の名前が決まって無かったからね。娘へだなんて、お父さんが娘に宛てて書く様な手紙じゃないわね」
ずっと、私の名前が嫌いなのかと思っていました。美月、って呼んでもらえないのは、私の名前が嫌いだからだって。
でも違いました。手紙を書いたその時、私に名前が無かったからでした。
「でも、最後の手紙。」
「…美月が生まれてすぐ、お父さん最期の二十枚目の手紙を書き出したの。最後の手紙には、きちんと名前を書きたいって。最後くらい、名前を呼んでやりたいって。」
一度止まっていた涙が溢れ出しました。
美月。美しい月。月のように輝く様に。
ごめんお父さん、今の私、輝いてないよ。
「…美月の名前は、お父さんが付けたのよ」
「…え?」
「生まれたその日、空気が澄んで月が綺麗に浮かんでた。美しい月みたいに、輝く子で居ますようにって、お父さんがね。」
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