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「そう、なんだね」
「…ごめんね、ずっと話せていなくて」
母が、いつも強くて涙を見せない母が、目を潤わせていました。二十年、私の分まで父の死を抱え続けていた、母が。
そっと母に寄り添って、抱きしめました。
温もりが、体に広がりました。
その温もりは、なんだか人一人分よりも大きいものな気がして、なりませんでした。
「…書こうよ、手紙」
「え?」
「お父さんに二十枚も手紙貰っちゃったんだもん、今度は私が贈らなきゃ」
筆を取ってから書くまでに、思ったよりも時間がかかりました。友人にはともかく、父に宛てて書く手紙は生まれて初めてでした。
それでも、私は書かなければならない、と思いました。
書き終わると、既に夜を迎えていました。
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