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父からの手紙
毎年冬、十二月十日。
私の誕生日に、父からの手紙がうちに届きます。
それを知ったのは小学一年生の時でしたが、私が一歳になる時から毎年手紙は続いていました。
幼い時から、父を見た事は一度もありません。
それもその筈、父は私と母を置いて、遠い国へ足を運んでいるからです。仕事柄仕方が無いらしいので、私も我慢していました。
それでも父が恋しくなるのが子供です。
小学生の時に行われる幾つもの行事に、父の姿が無いのはやはり寂しいものでした。友人達が両親と肩を並べて写真を撮ったり、話している姿が、少しだけ羨ましかったのです。
一度で良いから、父に会いたい。
その気持ちを初めて言葉に出したのが、七歳の誕生日の日でした。
「わたし、お父さんに会いたいな」
あの時の母の表情は、今でも胸に焼き付いています。
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