父からの手紙

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「ごめんね、お父さんも美月に会いたいと思うんだけどね」 仕事で忙しい母が、そういって私が眠りにつくまで横に寄り添ってくれました。母がそんな風にしてくれたのは初めてで、私は直ぐに眠ってしまいました。 とても、とても幸せな夜でした。 父の事を、一瞬忘れてしまうくらいに。 父からの手紙は、堅苦しいものでした。 「勉強は怠らない様に」だとか、「食べ物を好き嫌いせずにきちんとバランスを考えて食べるんだよ」だとか。 小学生一年生の私には読めない漢字が多すぎるのです。 そして、とても字が綺麗でした。 習字のお手本みたいな、綺麗な字。 それを真似て字を練習することもありました。 ただ、少し不満な事もあります。 それは、全ての手紙に共通するのが、宛名が「娘へ」である事です。 娘へって。美月って名前くらい、書いてくれてもいいのに。 だから、自分の名前だけは中学一年生になっても、少しだけ書くのが苦手でした。
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