50人が本棚に入れています
本棚に追加
「ごめんね、お父さんも美月に会いたいと思うんだけどね」
仕事で忙しい母が、そういって私が眠りにつくまで横に寄り添ってくれました。母がそんな風にしてくれたのは初めてで、私は直ぐに眠ってしまいました。
とても、とても幸せな夜でした。
父の事を、一瞬忘れてしまうくらいに。
父からの手紙は、堅苦しいものでした。
「勉強は怠らない様に」だとか、「食べ物を好き嫌いせずにきちんとバランスを考えて食べるんだよ」だとか。
小学生一年生の私には読めない漢字が多すぎるのです。
そして、とても字が綺麗でした。
習字のお手本みたいな、綺麗な字。
それを真似て字を練習することもありました。
ただ、少し不満な事もあります。
それは、全ての手紙に共通するのが、宛名が「娘へ」である事です。
娘へって。美月って名前くらい、書いてくれてもいいのに。
だから、自分の名前だけは中学一年生になっても、少しだけ書くのが苦手でした。
最初のコメントを投稿しよう!