50人が本棚に入れています
本棚に追加
高校三年生の冬、十二月十日。
郵便受けに入っていた封筒を手に取って、今度はその異様さに驚いてしまいました。
文字が、去年よりも歪んでいたからです。
それも、震えからくるようなレベルでは無く、何か【震えて仕方が無い】程に。
不安になって、母を部屋に呼びました。
「お母さん、この手紙変なの」
「どうして?」
「だって文字がこんなに歪んでる、お父さんに連絡しようよ、おかしいよ」
不安げに母を見上げると、母は少し涙ぐんでいる様に見えました。
「お母さん…?」
母は、何も言いませんでした。ただ、私を幼い時のようにそっと抱き締めて、頭を撫でてくれました。
あの時、母は何も言わなかったのではなく、言えなかったと気付けなかった自分に、少しだけ腹が立ちます。
最初のコメントを投稿しよう!