異変

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高校三年生の冬、十二月十日。 郵便受けに入っていた封筒を手に取って、今度はその異様さに驚いてしまいました。 文字が、去年よりも歪んでいたからです。 それも、震えからくるようなレベルでは無く、何か【震えて仕方が無い】程に。 不安になって、母を部屋に呼びました。 「お母さん、この手紙変なの」 「どうして?」 「だって文字がこんなに歪んでる、お父さんに連絡しようよ、おかしいよ」 不安げに母を見上げると、母は少し涙ぐんでいる様に見えました。 「お母さん…?」 母は、何も言いませんでした。ただ、私を幼い時のようにそっと抱き締めて、頭を撫でてくれました。 あの時、母は何も言わなかったのではなく、言えなかったと気付けなかった自分に、少しだけ腹が立ちます。
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