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伝言
会社に行きたくない。そんな日が、誰しもあるのではなかろうか。
ベンは今日がそんな日だった。さしたる理由は無いが、行きたくない。絶対に行きたくない。だがどうしよう。熱はないし、体のどこも痛くない。声を出してみたが、全く枯れてもいない。会社に電話したところで、これでは仮病とバレてしまう。
考えていると、1つの案を思いついた。非常に恥ずかしいが、これなら仮病とはバレないだろう。ベンは母親に電話をしてもらうことにした。
ちなみにこの母親、ちょっと過保護すぎるところがあった。息子のためと、やや大げさに病状を伝えた。まあ無理もない。子の可愛さは万国共通。そこまで責められることでもないだろう。
母親からの電話を取ったのは、ベンの同僚だった。ちなみにこの男、ちょっと大げさに物を言うところがあった。そのため、ベンの病状は幾分か悪化して伝えられた。
話を聞いた課長は、青い顔をした。ちなみにこの課長、ちょっと深刻に捉えすぎるところがあった。そのため、これはいかんと部長に話をしに行った。言うまでもなく、ベンの病状は悪化して伝えられた。
やがて何時間か経ったころのこと。ぐっすり眠っていたベンは、騒がしく話している声に起こされた。何事かと外を見ると、彼は自分の目を疑った。
会社の人間が、一堂に会しているではないか。みな一様に不安そうな顔をし、すすり泣いている者までいる。
一体これはどういうことだ。困惑していると、社長の声が聞こえてきた。大丈夫だベン君。きっと大丈夫だ。我々はいつまでも待っているから。必ず治ると信じるんだ。
事態を理解したベン。どうしたらいいのか分からなくなり、頭を抱えてしまった。
ベンの耳に、救急車の音が聞こえてきた。
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