それぞれ

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木の陰で、ゾウが不満をもらしていた。 「ああ、まったくつまらない。毎日毎日やれ水浴びだ 、やれお昼寝だ、なんの変化もない。もっと刺激的な生活を送ってみたいものだ。」 それを聞いていたネズミ、自分も不満をもらし始めた。 「変化がない、いいことじゃないの。こっちなんか変化しかないぜ。飯を食べようと思えばどこからか盗んで来なきゃならないし、その度にあの忌々しい猫が追ってきやがる。ああ、一回ぐらい何も気にせず草原を走り回ってみたいもんだよ。」 そこに通りがかったウマも、負けじと不満をぶちまけた。 「2人とも良いもんさ。俺なんか毎日毎日走りっぱなし。草を食べては走り、また走りだ。ああ、たまにはゆっくり水浴びでもしてみたいなぁ。」 それを黙って聞いていたフクロウ。3匹にこう言った。 「そんなに不満があるのかい。それならどうだろう。お前さんたち、それぞれ生活を入れ替えてみたら。」 なるほど、それは良さそうだ。そうと決まれば話は早い。ゾウはネズミの群れへ、ネズミはウマの群れへ、ウマはゾウの群れへと行くことにした。 1週間後、また3匹は木の陰に集まっていた。 「どうだったのかね。」 フクロウが聞いた。 「どうもこうもない。刺激的な生活なんてものがこうも浅はかなものだとは思わなかった。どこから食べ物を取ってくるか、そのことしか考えていない。一日中そればかりだ。気の休まる暇がない。」 ネズミも同調する。 「こっちだってもうクタクタだよ。気分が良かったのは最初だけ。どれだけ疲れようが、いつまでも走っていやがる。おまけに食べるものといえば、草、草、草。これ以上あの生活を続けたら骨と皮になりそうだ。」 「ふむ。君はどうだったかね。」 フクロウはウマを見たが、それは表情から容易に察することができた。他の2匹と大差なかったようだ。 「これでわかったろう。憧れなんてのはそんなもんだ。皆、生まれた時からの生活が結局は合ってるのさ。」 こうして、3匹はそれぞれの群れへ戻っていった。つまらない部分は多いが、あの生活よりはマシだ。自分にはこれが一番なんだと、不満を言うことは無くなった。 「やれやれ、一件落着か。まったく、今の若いもんはすぐに不満をいいやがる。」 事が無事に終わったのを見て、フクロウが呟く。 「…ああ、それにしても、空を飛ぶだけの生活は退屈だなぁ…」
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