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田口健二郎①
――銃だ。
まず目にしたときには玩具のモデルガンかと思ったが、拾い上げると明確に本物であることが感じ取れた。
禍々しい重量を湛えたそれは、薄らと火薬と血のような鉄分の匂いを放っているかのようだ。
撃鉄を起こし、安全装置を外して、後は引き金を引けば鉛玉が飛び出す。凡そ私が想像しうる拳銃がこの掌に収まっている。
この身を凍えさせる風も無いのに、身震いが止まらない。
この拳銃を得て私は何を成せば良いのか。
何を打てば良いのか。
慌てて周囲を目を走らせ、人通りがないことを確認すると、鞄に無造作に突っ込んだ。
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