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うまれおちたもの
妊娠検査薬をレジに持っていったら、薬局の店員に好奇の目で見られた。若い女が妊娠検査薬を買うのがそんなに面白いか、と心の中で毒づく。
一人ぼっちで入る冬の駅の公衆トイレは日中でも薄暗く寒い。
封を切って尿をかけると30秒も待たずに陽性の線が出てきて、新しい命の誕生と、わたしの人生終了の知らせを告げた。
ポケットからスマホを出し『中絶 お金がない』でググる。どうやら保険がきかない上に、妊娠の週数によって金額が変わるようだ。
週数って、自分が何週なのかわからない。中絶費用も、こんな金額払えない。
妊娠初期は不安定な為、自然に流産になる確率もある。そんな物騒な一文を目にして安心した。このまま妊娠がなかったことになる可能性があるなら、それを祈るしかない。
生まれても困る、育てられない。
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