贄の少女

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やがて、雨が小雨になり……夜が更けると数人の村の男……あるものはそのままの服装で、あるものは合羽を着て集まってきて岩見が入った棺を荷車の上にのせて山の方へと向かって行った。 少女はその様子を隣の部屋から息を殺して見詰めると両手を合わせて岩見の無事を神に祈った。 そして、そうは思いながらも胸の高鳴る鼓動が止まらず……やがて少女は、耐酸性のブーツを履き、同じく耐酸性の軍用ポンチョを羽織ると、棺を追って夜道を駆け出していた。 棺は、山の中腹にある社の前に置かれた。 社の前には男女と同じ村人が用意したのであろうか……LEDのライトが篝火の様に何個も置かれ、夜の闇の中で煌々と棺を照らしていた。 それから、小一時間も経ち、雨もすっかり止んだ頃……社の周りがざわざわと動き始め、何者かが姿を現した。 合計で10人はいただろうか……汚れた軍服を着るもの上半身裸の者等身なりはまちまちだったが、共通していたのはその手に銃やらレーザー・ブレード……を持っていたことだった。 そのうちの数人が棺の周りをぐるりと回り、何も異常がない事を確かめると棺の蓋を開けた。 「ほう……中々の上玉じゃあないか……」 そして、棺の中に手を入れようとしたとき……銃声とともにその男の頭が吹き飛んだ……。 岩見の行動は早かった。棺から飛び出すと相手が呆気に取られている隙に近くにいた二人をレーザー・ブレードで撫で斬りにし、近くにいた一人を拳銃で始末した。 残りは6人だった……。しかし、相手は岩見の早業に恐れをなし踵を返すと社の裏手の森の中へと走って行った。 岩見は更にそのうちの二人を自動小銃で始末した。 後ろで、樹のこすれ合う音が聞こえ……少女が姿を現した。
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