贄の少女

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そして、少女に言った。 「夜も遅い、家まで送りましょう……。」 「傷の具合は?」 岩見の言葉に少女は言った。 「問題ありません……私はは戦争中に多数作られたサイボーグの中の一つです。 撃たれた箇所は丁度機械の部分だった。何の心配もありません……。」 「貴方は、なぜここまでして下さったのですか……。」 岩見の言葉に少女は言った。岩見は少女の目を見返しながら答えた。 「お堅く言えば国民をあらゆる危害から守るのが私たちの務めです。私はそれに従ったまでに過ぎません……。ただ……。」 「ただ……?」 「先ほど言ったように、困った人がいたら助けるという、人間としての優しい性質が、半分以上機械の私にも残っていたのでしょうね。」 岩見の言葉に、少女はただただ頷いた……。 少女の家に帰ると村人たちが集まっており、岩見と少女を見て一様に頭を下げた。 ある者は岩見に酒を勧め、ある者は食べ物を勧めた。 そして、少女の周りにも子供たちや少女と同じ年頃の子たちが集まり事の顛末を聞きたがった……。 少女はありのままに起こった出来事について答えるのみだった。 村のその夜は、細やかな喜びと静寂の中に過ぎて行った……。
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