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翌日の早朝、岩見は荷物を整えると少女と男女に別れを告げた。
「もう二度と、あのような事案は起こらないと信じます。御息災に……。」
その言葉に男女は頭を下げた。
岩見は、自動小銃を肩に掛け、ゆっくりと歩きだした……その後を、少女は追っていた。
少女は岩見の服の袖を掴むと言った。
「数年前から……戦争は終わっているのも同然なのに、なぜ貴方は行くのですか?貴方さえよければここに居て下さってもいいのです。」
その言葉に、岩見は言った。
「楔を解かれた元軍人という鬼どもが闊歩しているのです……昨晩、貴女も見た様な……人の皮を被った鬼が……。」
その言葉に、少女は立ちすくみ思った……この人は、業を背負っているのだと……だからここにとどまることは出来ないのだと……。
俯いたままの少女の頭を岩見は優しくなでて言った。
「貴女を育ててくれた方……そしてこの村の人たち……そう戦争が生んだアンドロイド達……それが貴女ただ一人を守るために存在しているのです。
もしも、私が立ち寄らなくとも、彼らはプログラムされた行動規則に従い、事を解決したのかもしれませんが……まあ、戦闘をプログラムされていないアンドロイドではありますがね。」
岩見の言葉に、少女は言った。
「そこまでご存じとは……。」
「ならば、貴女はここにいて彼らの保護を受けるべきです。
他の土地の悲惨さはとても口では言い表せない……だから賊もこの村を襲ったのです。」
少女の言葉に答えた岩見はじっと少女の顔を見詰めながら言った。
「では、さようなら……この世界に少なくなりし生粋の人間よ……。」
岩見はそう言うとゆっくりと歩を進めた……その姿を見送り、そして去ってゆく岩見の後姿を見詰めながら少女は心の中で祈った……。
「神様、お願いです……あの方を御救い下さい……。」
……と……。
ー END ―
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