【BL】お礼

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 学校帰りにゲーセンに寄って何時間も遊んでから、俺は家路についた。  ちょっと遊び過ぎたかな。  早く帰らないとお袋に大目玉を食らいそうだ。  そして俺は、繁華街を通るより裏通りを通った方が早いから、迷う事無く裏通りへ足を向けた。  いかがわしい店が立ち並ぶ中、仕事帰りのサラリーマンに混じって目立たないように歩く。  最近じゃうちの学校の生徒がここらでウリをやってるなんて噂もあったりして、なるべくこの裏通りは通らないようにしてたんだけど。  ま、大丈夫だろ。  そんな事を思いながら歩いていると。 「ねえ、君」  後ろから声をかけられた。  振り向くと、30代前半くらいのリーマン。  俺は立ち止まり、無言で男を見た。 「君、ウリ?」  男は興味深げに俺をまじまじと見つめて訊いてくる。  冗談じゃねー。  俺ってそんなに軽そうに見えんのか?  ていうか、そうやって直球で訊いてくるもんなのか? 「その制服、K学園だよね?良かったら僕と遊ばない?」  俺が黙っていると、男は尚も訊いてきた。 「悪いけど、ウリじゃないから」 「そうなの?でもこんな時間にこんな所歩いてるって事は、少しはそっちに興味あるって事でしょ?」 「近道で通っただけだよ」 「興味はない?」 「興味なんてねーよ」  俺はいい加減うんざりして男を睨んだ。  お人好しそうな顔してしつこいっての。 「結構楽しいと思うよ。お小遣い稼げるし、僕と遊んでみようよ」 「興味ないし、金にも困ってないし、早く帰りたいんだよ」 「こんな遅い時間まで出歩いてて、早く帰りたいっていうのはどうなのかな」 「遅くなっちまったから早く帰りたいんだよ」  そう言って歩き出そうとした瞬間だった。  みぞおちに鈍い衝撃が走って、目の前が真っ白になった。  男に殴られたらしいと気付いたのは、思わずその場に膝をついて崩れてからだ。  痛みのせいでうまく起き上がれないでいる俺の鼻先に、変な小瓶が押し当てられた。  つんとくる、甘酸っぱい匂いが鼻腔を刺激する。  男は、動けないでいる俺にしばらくその匂いを嗅がせた。  段々と頭がぼうっとなってくる。 「ちょっと会社で嫌な事があってさ。遊べる相手探してたんだよね。君、かなり僕好みだし、言う事聞いてくれたらこれ以上痛い目には遭わせないよ。お金もあげるし」  男は平然とした顔でそう言うと、俺を立たせた。  足元がふらついて、男の支えなしではうまく歩けない。  逃げたいのに、体が言う事をきかなかった。  男はふらつく俺の肩をしっかり支えて、どこかへ向かって歩く。  そのままずるずると引きずられて、気付くとラブホが目の前だった。 「やっ、やだっ。離せっ」  予想通りの事態に、俺は必死で抵抗する。 「今更でしょ。それに、もうここが結構熱くなってない?」  男は余裕の表情で俺を見ると、俺の股間に手を伸ばした。  さらりと撫でられて初めてそこが変化している事に気付く。  さっき嗅がされたのは、どうやら媚薬か何かだったらしい。  気付いてしまうと、急激にそこに意識が集中してしまった。  力が入らず、抵抗もままならない。  でも抵抗はしない方がいいかも知れないと思った。  人の良さそうな顔してる奴ほど、キレる沸点は低い。  現に、誘いを断っただけでもこれだ。  下手に抵抗すると殺されかねない。  だけど、こんな奴の言いなりになるのも嫌だった。 「や、離せよっ」  俺は必死で体を捩った。  そのせいで男の腕からは離れたものの、力の入らない足では走る事もできない。  2、3歩進んだところで、男に髪の毛を掴まれてしまった。  首が後ろに仰け反り、背中から地面に倒れ込む。  起き上がろうとしたところで、腹に蹴りを入れられて息が詰まった。 「うっ、うげ⋯⋯」  胃液が逆流してくる。  すぐに息ができなかった。 「大人しくしとけば痛い目には遭わせないって言ったのに、やっぱり最近の高校生って馬鹿?」  男は俺の腹を脚でぐいぐいと押しながらくすくすと笑う。  冗談抜かせ。  俺が馬鹿なんじゃない、お前が狂ってるんだ。  男は俺の腹を踏みつけたままにやにや笑っている。  誰かに助けを求めようと辺りを見回すけど、不運な事に通行人はいなかった。 「あんまり抵抗されたくないんだよね。抵抗される方が燃えるっていう奴もいるけど」 「う⋯⋯」 「これ以上痛い目に遭いたくないだろ?お小遣いは弾んでやるからさ。大人しく言う事聞きなよ。どうせ今から他の子探しても見付からないだろうし、逃がす気ないから」  男は足をどけると、俺の横にしゃがみ込んだ。  直後。  ガツッ。  男の背後で鈍い音がした。  途端、男は苦痛の表情を浮かべて俺の上に倒れ込んでくる。  何が起こったのかと思って男の背後を見ると、同じ学校の制服を着た奴が片足を上げて立っていた。  男の後頭部に蹴りを入れたらしい。 「大丈夫か?」  そいつはそう言って俺の上から男をどけてくれた。 「あ、あり、がとう⋯⋯」  俺は上半身を起こして、そいつに礼を言う。  腹を踏まれてた衝撃で呼吸がうまくできないせいか、まともにしゃべれなかった。  思い切り踏みつけやがって、ちくしょう。  手を借りて何とか起き上がる。  そいつは高塔と言った。  顔は初めて見たけど、名前は知っている。  悪名高い3年生。  俺の1年先輩だ。 「ウリなんてやめとけ。買う奴なんてどうせこいつみたいなろくでなししかいないんだからさ」  高塔は苦笑いを浮かべてそう言った。  違う。  そう言いたかったけど上手く言葉が出ない。 「うっ⋯⋯くそっ!ガキのくせに生意気なんだよっ」  高塔に蹴られてうずくまっていた男が起き上がった。 「うるさい。しばらく寝てろ」  高塔はそう言うと、再び男に蹴りを入れる。  今度は顎にヒットして、男はそのまま気絶した。  鈍い嫌な音がしたからもしかしたら骨が折れてるかも知れない。  だけど俺はこの男が気の毒だとか、そんな事をした高塔が怖いとは思わなかった。  できる事なら俺が自分の手でこいつに制裁を加えてやりたかったからだ。 「気絶してやんの。まあいいや。お前まともに動けないだろ。とりあえず俺んち来いよ」  高塔はそう言って俺を立たせる。  リーマンに声かけられた時点でかなりな時間だったから、お袋はもうかんかんに怒ってるに違いない。  どうせ怒られるんなら何時間遅れても同じだ。  それに、ここで断れば高塔だって何をするかわからない。  もしかしたらこのリーマンよりも性質が悪いかも知れない。  俺は仕方なく高塔について行く事にした。  高塔の家はわりと大きな一戸建てだった。  だけど、家に人の気配はなかった。  何か複雑な事情がありそうだ。  深く知りたいとは思わないけど。  とりあえずシャワーを借りる事にした。  地面を転がってかなり汚れてたし、蹴りを入れられてかなり脂汗もかいてたからさっぱりしたかったんだ。  高塔は快くOKしてくれた。  風呂まで案内される。  俺が服を脱ぎだすと、高塔は脱衣所を出て行った。  あいつに嗅がされた薬はまだ効いていて、俺の股間は熱を持ったままだ。  シャワーの音でごまかしながら抜いたけど、1回じゃ熱は引かなかった。  でもずっとシャワーを浴びてる訳にもいかず、仕方なく風呂を出る。  タンクトップに制服のスラックスという格好で出ると、高塔はキッチンで待っていた。  そして俺を2階の部屋に案内してくれる。  案内された高塔の部屋はこざっぱりしていて、悪名高い奴の部屋とは思えなかった。  高塔に言われて、ベッドに腰かける。 「で?あのリーマンと何を揉めてたんだ?金か?」 「ち、違う。俺はウリなんかやってない」 「まあ、そういう事にしといてやるよ。とりあえず助けてやったお礼代わりに、1回ヤらせろよな」  高塔はそう言ってにやりと笑った。  やっぱり。  予想通りだ。  高塔は俺がウリをやってると思い込んでる。 「やり方、知ってんの?」  俺は高塔を見つめた。  そっち方面の経験は豊富そうだから、男同士でも経験があるのかも知れない。 「知らないと思うか?」  俺の言葉に、高塔はそう言ってくすりと笑う。 「⋯⋯助けてもらったのは感謝してる。だけど俺はウリなんてしてないし経験もないから、そういうの以外でお礼したいんだけど」 「それは断る。金には困ってないからな」 「俺、マジでウリなんかやってないし、男とヤった事もないんだよ」 「そうか?それじゃ本当かどうか体に訊いてやるよ」 「本当だって。俺、そっち系は興味ないし、そんな事するほど金にも困ってないし」 「信じる信じないはこの際どうでもいいんだよ。つべこべ言わずにヤらせろよ。減るもんでもないだろ」 「だから何でそうなるんだよ。そんなに俺とヤりたいのか?」 「そうだって言ったら?」 「⋯⋯物好きだな」 「かもな」 「認めるなよ⋯⋯」  押し問答をしながら、高塔は俺に迫ってきた。  ゆっくりと後ずさるけど、すぐに背中が壁に当たる。 「お前さ、自分が有名だって事、気付いてないだろ」 「はぁ?」  突然の予想外の言葉に、俺は思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。  俺が有名だって?  そんなの初耳だ。  大体、高塔みたいに悪い噂とは無縁だし、学校でも私生活でもそんなに目立つ要素はない筈だ。 「わかってないらしいな。まあいいさ」  混乱している俺を見てくすっと笑うと、高塔は俺に顔を近付けてきた。  あっと思う間もなく唇を塞がれる。  壁で後頭部を打った。  首を振って逃げようとするけど、上手く動かせない。  高塔の舌が俺の口内で蠢く。  歯列をなぞり、舌を絡め取り、唾液をかき混ぜる。  散々口内を貪ってから、高塔は俺から離れた。  そしてさっきまでとは違う、欲望が滲んだ眼差しで見つめてくる。  忘れていた股間の熱が再燃した。  気付かれるのが怖くて、思わず高塔の顔を凝視する。 「そんな顔で見るなよ。抑えが利かなくなる」  高塔はにやりと笑うと、俺をベッドに押し倒してタンクトップをたくし上げた。  露になった胸を高塔の手が這い回る。  乳首を刺激されて、体がびくっと震えた。  すると高塔は意地悪な笑みを浮かべて、執拗にそこを攻め立てる。  指でつまんだり、指先で転がしたり。  その度に俺の口からは自分のものとは思えないような切ない喘ぎ声があがり、体は敏感に反応した。  きっと、あのリーマンに嗅がされた薬のせいだ。  乳首をいじられているだけなのに、股間が疼いて仕方なかった。  体中が火照って、全身が心臓になったような感覚になる。  高塔にタンクトップを脱がされても、スラックスのベルトを緩められても、まともに抵抗できなかった。 「何だ、やる気満々じゃん」  下着を押し上げている俺のモノを見て、高塔はにやりと笑う。 「ちが⋯⋯っ、あいつに、変な薬、嗅がされて⋯⋯あぁっ」  必死で言うのに、その間も高塔の手は俺の体を這い回った。  言葉が途切れ途切れになってしまう。 「ふーん。媚薬でも嗅がされたのか?まあ俺としてはこっちの方が楽しめそうだけどな」  高塔はそう言って、俺の下着をずり下ろした。 「やっ、やめっ……」  足を閉じようとするけど、高塔の体が間に入り込んでいるのでそれもできない。 「へえ。綺麗な色してんじゃん。あんまり使ってなさそうだな」  高塔は俺のモノを見て、意外そうな声をあげる。  実際、ほとんど使ってねーよ。  あんたと違って俺はそんなにヤった事ねーんだ。  口には出せない悪態をついてみても、事態は変わらない。 「や、やだって。帰らなきゃお袋が心配するからっ」 「お前が風呂入ってる間に電話しといてやったぞ」 「はぁ!?」 「気分悪いみたいだから休ませてるって言ったら、よろしくお願いします、だってさ」 「何で俺んちの電話番号⋯⋯」 「お前の携帯。着信履歴に“自宅”ってあったから」  焦る俺を楽しそうに見ながら、高塔は笑った。  携帯はリュックに入れていた。  帰りが遅いからお袋が電話をかけてきていたんだろう。  それにしても、風呂入ってる間に勝手に人の荷物覗いてたのかよ⋯⋯。 「マジでヤる気?」 「ここまできてまだ冗談だとか思ってるのか?」  俺が訊くと、高塔は俺のモノをぎゅっと握った。  その刺激に思わずびくっと震える。  確かに、冗談ではなさそうだ。 「ほんとに俺、男とヤった事ないんだけど」 「そんな感じだな。ま、あのヤバいリーマンにヤられるよりはマシだろ?」  高塔はそう言ってにやりと笑う。  どっちもどっちだ。  無理矢理ヤられる事に変わりはない。 「何で俺なんだよ。あんたならいくらでも相手いるだろ」  俺はそう言って高塔を睨んだ。  助けたお礼だか何だか知らないが、わざわざそんな理由をつけて俺に体を要求しなくても、いくらでもヤらせてくれる奴がいるだろうに。  高塔が何を考えてるのかわからなかった。  ただわかるのは、高塔はこの行為を止める気がないだろうという事。  そして、俺は逃げられないという事。 「そりゃあな。性欲処理でヤるだけの相手なら、男でも女でもいくらでもいるさ。でもな、欲情したのはお前が初めてだ」 「は?どういう事?」  考え込んでいると思いもかけない言葉が返って来て、俺は目を丸くした。  じゃあ今まであんたがヤった連中には欲情しなかったのかとツッコミを入れたくなる。  欲情しなきゃ勃たないんじゃないのか、普通。 「だから、溜まった時にヤるだけの相手ならいくらでもいるんだよ。でもな、自分からヤりたいって思ったのはお前が初めてなんだ。だからヤらせろ」  高塔は真面目なのか不真面目なのかわからない顔で言う。  一体何が言いたいのか、あいつに嗅がされた薬のせいで意識が朦朧としている俺には理解できなかった。  どっちにしろヤる事に変わりないんだな⋯⋯。  半ば諦めの境地に達していると、高塔は俺のモノに顔を近付けた。 「や、ちょっと、何してんだよ」  俺は焦って高塔の髪を掴む。 「口でされた事ないのか?」 「された事ねーよ」 「男にされる方が気持ちいいんだぜ」  高塔はにやりと笑うと、俺のモノを口に含んだ。  ねっとりとした感覚がそこを支配する。 「あ、や、やだっ、やめろって」  俺は思わず体を捻った。  男にされて快感を覚えている自分が嫌になる。  それでも高塔は俺を離してくれなかった。  舌で巧みに俺のモノを絶頂に導いていく。 「あ、あっ」  思わず上ずった声が出た。  やばい。  こいつマジで上手い。  でも、高塔はイかせてくれなかった。  あと少し、という所で口を離してしまう。  俺は刺激がなくなるのが嫌で、つい腰を振ってしまった。 「イかせてほしいか?」 「⋯⋯ほしい」 「じゃ、俺のでイかせてやるよ。あ、でも初めてじゃイけないかもな」  高塔はそう言って笑う。  そして、ベッドの下からボトルを取り出した。  慣れた手つきでキャップを取ると中の液体を指に絡める。  その指を、今度は俺の尻に近付けた。  今まで他人が触れた事のないそこに冷たいものが塗り込められる。 「あ、あ、やだ⋯⋯っ」  俺は体を捩った。  しかし高塔は俺の抵抗などものともせずに、指を侵入させてくる。  妙な感覚が走った。 「暴れるなよ?中に傷がついたら辛いのはお前だぞ」  高塔はそう言って、俺の中に入っている指をくいっと動かす。  だったらやめてくれって心の中でツッコミを入れてみても、高塔の指が出て行ってくれる訳がない。 「あぁんっ」  指が与える刺激に、声が出てしまっていた。 「何だ、感じてんのか?」  高塔が嬉しそうな笑みを浮かべる。 「や、違⋯⋯」  口では否定したけど、俺の体はびくびくと反応していた。 「もっと気持ち良くなるためにしっかり解さないとな」  高塔はそう言って指の角度を変える。 「んっ、あっ、やあっ」  内壁を擦られる刺激に、体が敏感に反応した。  やばい。感じてる。  俺の焦りなど関係なく、高塔の指は俺の中で動いている。  少しして、指が引き抜かれた。  ほっとしていると、今度は数が増やされる。  2本の指は、入り口を広げるように交互に動いた。  ローションのせいでクチュクチュといやらしい音がする。  何か、気持ちイイかも⋯⋯。  俺は抵抗するのも忘れて、その感覚に身を任せていた。 「前立腺マッサージしてやろうか」  高塔がそう言ってにやりと笑う。  それが何の事だかわからない俺は、無言で高塔を見た。  俺の中にある高塔の指が、探るような動きになる。 「あ、あ、何っ?」  突然全身を突き抜けた快感に、俺は体を仰け反らせた。  前に触られてもいないのに射精してしまいそうになる。 「ここか」  高塔はその一点を集中的に刺激した。  その度に強い射精感に襲われる。 「やっ、や、やだあっ」  強い快感が怖くて、俺は体を捩って逃げようとした。 「嫌じゃないだろ?」  高塔が耳元で囁くように訊いてくる。 「やだ。おかしくなる⋯⋯」  俺は首をふるふると振った。 「おかしくなりそうなくらい、感じてるって事だろ」  高塔は楽しそうにそう言いながら、指を動かし続ける。  射精感は強いのに、実際には射精していなかった。  先走りの透明な液だけが溢れている。  早く吐き出してしまいたいのに、前には何も刺激が与えられてない。  自分でやろうと伸ばしかけた手は、高塔によって阻まれた。 「まだ我慢しろよ」 「や、もうイかせて、くれ」  強い快感と射精できない苦しみで意識が朦朧としてくる。 「そろそろいいかな」  高塔はつぶやくと、指を引き抜いた。  今度は硬く勃ち上がった自分のモノを俺のそこに当てる。  しっかり解されていたそこは、それほど抵抗なく高塔のモノを飲み込んでいった。  指よりももっと強い圧迫感があったが、痛みはほとんどなかった。 「ほら、全部入ったぞ」  高塔はそう言って腰を動かす。 「あ、あ、やっ」  高塔の動きによって、内壁がうごめくのがわかった。  指よりももっと太いモノで内壁を擦られる。 「クスリ嗅がされてるから気持ちイイだろ」  高塔は腰をゆっくり動かしながら訊いてきた。  俺は必死で首を振る。  ゆっくりした動きがもどかしいと感じるくらい、気持ち良かった。  時々、高塔のモノが前立腺を刺激する。 「んっ、あっ、ああっ」  その度に俺の口からは高い声があがっていた。  抑えようとしても我慢できない。 「感度がいいんだな。これなら初めてでもトコロテンできるんじゃねえ?」  高塔は腰を動かしながら楽しそうに言う。  俺にはトコロテンの意味がわからなかった。  そのうち腰の動きが早くなる。 「やっ、あ、んっ、ああっ」  高塔のモノが前立腺を擦る度に、俺は高い声をあげていた。  マジで感じてるよ。  そりゃもう頭おかしくなりそうなくらい。  あのリーマンに嗅がされたのはやっぱり媚薬だったに違いない。  こんなに感じるのは媚薬のせいだと思いたかった。 「やっぱ前立腺が気持ちイイだろ」  高塔はにやりと笑うと、そこを集中的に攻める。 「あっ、ああっ、あ、そこっ、やぁっ」  確かに前立腺を刺激されると気持ち良かった。  前にはまだ触れられていないのに、そこを擦られるだけで弾けてしまいそうだった。 「ほらっ、後ろだけでイってみろよっ」  高塔がひときわ激しく腰を打ち付ける。 「やっ、あっ⋯⋯ああっ」  俺は信じられない事に、後ろへの刺激だけで射精してしまっていた。  生暖かい液体が下腹を濡らす。  熱を吐き出した俺のモノは、まだ硬さを保ってびくびくと震えていた。  ほどなく、高塔も俺の中に精を吐き出す。 「すげえな。初めてでトコロテンしたぜ」  俺の中から自身を抜きながら、高塔は楽しげに笑った。  後ろだけでイく事をトコロテンって言うんだろうか。  それとも、触らないで射精するのをトコロテンって言うのか?  俺は快感の余韻にひたりながらぼんやりとそんな事を考えていた。 「お前、サイコー。俺のモノになれよ」 「⋯⋯何でそうなるんだよ」 「お前がここまで感じたのな、クスリのせいだけじゃねーぞ。俺とお前、体の相性がイイんだよ」 「男同士で相性もクソもあるか」  嬉しそうな高塔を睨みながら俺は悪態をついてみた。  きっと今のこいつには何を言っても通用しないとは思ったけど。  案の定、高塔は嬉しそうににやにやと笑うだけだ。  快感の余韻も段々と冷めてきて、俺は少し冷静に考えられるようになってきた。 「なあ、俺が有名ってどういう事だ?」  そして、疑問に感じていた事を口に出す。 「やっぱり知らないんだな。お前さ、うちの学校の裏新聞って読んだ事ないだろ」  高塔は相変わらず楽しげな笑みを浮かべてそう言った。  新聞部が定期的に刊行しているゴシップ系の新聞が通称「裏新聞」だったと思う。  その存在を知ってはいたけど、読んだ事はなかった。 「その新聞が何?」 「だからその新聞の常連なんだよ、お前」 「は!?常連って何!?」  高塔の言葉に俺は目を丸くする。 「お前さ、“抱きたい男”ランキング、2年連続で1位なの」 「抱きたい男⋯⋯って」  俺は訳がわからなくて眉をしかめた。 「要するにネコって事だ。うちの学校はお前に突っ込みたいって奴が多いんだよ」  高塔がそう言ってにやにや笑う。  俺と高塔が通う高校は男子校だ。  中には、女みたいな可愛い外見の奴をちやほやして祭り上げてる変な奴らもいる。  ちょっと可愛い顔をしているからって、ちやほやされていい気になってる勘違いな奴もいる。  だけど俺は今までそういうのの対象になった事はなかったし、これから先もなる事はないと思っていた。  抱きたい男だか何だか知らないが、そういうのの対象はやっぱり祭り上げられてる奴がなるんじゃないのか。 「俺のクラスの連中は随分騒いでたぞ」 「そんなの知らない」 「ま、知らなくて当然だな。お前のクラスの連中はお前が騒がれて取り巻きがつくのが嫌で、お前をできるだけ隠してたみたいだからな」  高塔はそう言って肩をすくめた。  考えてみると、思い当たる節はいくつかある。  教室を移動する時は、いつも背の高い奴らが俺の周りにいた。  移動がなくて教室にいる時も、廊下から見えないように誰かが傍にいた。  1年の時はそういう事はなかったけど、2年になって急にそんな感じになった気がする。 「お前、ちやほやされてても気付いてなかっただろ」 「⋯⋯言うほどちやほやされてない気もするけど、心当たりはあるな」  俺は高塔の言葉にうなずいた。  確かにクラスの連中はやたらと俺と仲良くしたがっていた。  俺はもともと大勢でつるんだりする性格じゃないけど、何故か俺の周りには人が多かった。  きっと、それが第三者から見たらちやほやされてたって事なんだろう。 「最初はな、人気があるのに自覚ない奴がいるって聞いて、どんな奴だろうって程度の興味だった。けど初めて生で見て、かなりキた」  高塔はそう言って俺の顔に手を伸ばす。  思わず目を閉じると、優しく頬を撫でられた。  そして、ゆっくりと唇が押し当てられる。  俺は優しいその動きに抵抗する気になれず、そのまま身を任せていた。 「なあ、俺のモノになれよ。気持ちイイ思いできるぜ?」  唇を離した後、高塔はそう言ってにやりと笑う。  どうも高塔のペースにはめられている気がしてならない。  でもどうやら俺は、高塔を嫌いにはなれそうになかった。  痛い事はされない訳だし、実際かなり気持ち良かったし、しばらく付き合ってみるのも悪くないとも思った。 「まあ、助けてもらったし、お礼にしばらくは付き合ってやるよ」  俺は口を尖らせつつ、高塔を睨んだ。  怒るかと思ったけど高塔はにやりと笑っただけだった。 「強気な事言えるのも今のうちだけだぞ。すぐに虜にしてやるからな」 「すごい自信だな。それじゃせいぜい頑張って虜にしてみろよ」  俺もにやりと笑い返してみる。  高塔はすぐに俺の股間に手を伸ばしてきた。 「今すぐ虜にしてやるさ」  そう言って俺に覆い被さってくる。  2回目に突入する気らしい。  高塔の言葉が実現するのに、そう時間はかからなかった。  終。
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