あきらめ

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 もう12月も半ばの寒空の下、お互いの息は白く漂い夜の空気に溶けていった。 ____「ごめんなさい。……それはちょっと」  連日による苦行は何か虫の知らせなのか。どうにか断りの言葉を振り絞るも、彼は顔を上げなかった。 「お願いします!」 「無理ですよ。お願いだから、顔を上げて下さい」 「いいと言うまで上げません!」 「あの、私時間が……」 「この街に、どうしても会いたい人がいるんです。……ずっと何年も探していた人が。やっと手がかりが見つかったけど、まだ会えてなくて。……見つかるまでで構いません。どうか、……どうかお願いします!!」  彼はおもむろに腰をおろした。まさか、土下座をするつもりじゃないだろうか。  彼が両手を地面につける前に、私はついに降参して叫んだ。 「わかった!わかったから!早く立って下さい!」  また諦めてしまった。諦めるのは私の特技だと、笑って言ってくれた母を思い出した。母は、私の全てを短所ではなく、長所にする天才だ。 「ありがとうございます!ありがとう!!」  パアッと明るい表情で私の両手を握る彼の手は、凍るような冷たさで、地面につけることがなくて良かったと、安堵した。
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