あきらめ

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 やっと全ての作業が終わった。時計を見ると、もう22時近い。  着替える気力もなくて、ユニフォームの上からコートだけ羽織ると、すぐに外へ出た。  ぴゅうと冷たい風が吹き荒んで、思わず目を閉じる。だいぶ寒くなってきた。  街には毎年代わり映えしないクリスマスイルミネーションが彩られていて。ワクワクするような予定もない私は、そんなものには目もくれずにコンビニに直行した。  早く何か食べて、電車に乗らないと。 「あっ!」  小さな子供の声が聞こえ目線を向けると、床に落ちた小さなクリスマスケーキが。  横に倒れてしまい、中身は悲惨な状態になっている。 「どうしよう……ママに怒られる」  それを見下ろしている少女は今にも泣きそうで。思わず私はそのケーキを拾い上げた。  驚いている少女に向かって微笑み、人差し指を口に当てる。そしてそのままレジへと向かった。今日の夕御飯が決定。  一緒にホットコーヒーを買ってコンビニを出ると、駅前にある広場のベンチに腰をおろした。  そこは、毎夜ストリートミュージシャンが演奏を始めたり、ダンスサークルが練習をしていたりしてとても賑やかだ。  今日も誰かが楽器を出して準備している。  黒髪で、左サイドの一部分だけが赤く染まっている、印象的な青年だった。  圧倒されるようにまじまじ見つめた後、今度は見てはいけないものが目に入った。  さっき先に上がったメイちゃんと、桜ちゃんの姿だ。  二人は楽しそうに話しながら、そのミュージシャンの演奏を待っているようだった。 「全然元気じゃん」  そうポツリと呟くと、見なかったことにして、今度はコンビニのケーキを取り出す。  クリームとスポンジがべちゃっと潰れていて、原型がわからない。  いろんなことが可笑しくなってきて、笑いを堪えながらそれを頬張った。
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