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 翌日。塩見はインターホンの音で起こされた。ベッドの中、手探りで携帯を見つけだし時刻を確認する。午前10時すぎ。 「……」  インターホンはまだ鳴っている。仕方なくベッドを降り、最近なにかネットで買い物をしただろうか? と、まわらない頭で考えながら玄関へと向かう。  中から扉を開けると、そこに立っていたのは宅配業者ではなく、戸川だった。 「……え?」 「おはよ。買い物付き合ってよ」 「え、いや、仕事は?」 「有給。引っ越しの翌日って疲れるじゃん。だから」  疲れると言いながら買い物とは? と、塩見はだんだん頭が痛くなってくる。そして、これだから嫌なのだと思う。必要以上に他人が自分の生活圏内に介入してくると、些細なことで塩見は相手を嫌ってしまう。ひとりでゆっくり過ごすはずの時間を土足でどかどかと踏み荒らされるのは、例え相手が戸川であっても塩見には許し難い。 「……買い物はひとりで行ってください。僕はまだ眠いので」  扉を閉めようとする塩見に戸川が追いすがる。 「わかった。じゃあ、ネットショッピング。それならいい?」  戸川から発せられる感情は、トゲのないやわらかいものだと塩見は感じる。それに比べて自分はどうだろう? と、妙な自己嫌悪に陥り、塩見は閉めかけた扉を無言で大きく開いた。
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