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「いつか一緒に仕事が出来るといいね」  塩見の頭をぽんぽんとしながら戸川が言う。 「……それ、本気で言ってる?」 「なんで? だって片瀬くんも出版社で働いてるわけだし、星野出版さんからシオちゃんの本が出たって不思議じゃないでしょ」 「……そういうとこ。好きで嫌い」 「え? なになに、どういう意味?」  過去の話とはいっても、片瀬は塩見の元恋人だ。その相手と仕事が出来たらいいと、なんの躊躇いもなく言える戸川が、塩見は好きで嫌いだったりもする。 「もうちょっと心配して……やきもち妬こうよ」 「あ、そういうこと? えー、だって信用してるし」 「鹿島くんには敵意むき出しにしてたのに、なんで元彼は平気なのかがわかんない」  塩見の口から飛び出した『元彼』という単語に、戸川の顔が険しくなる。 「なんだろ。元彼って言われちゃうと、ちょっとイラッとすんだけど」 「いや、意味わかんない。戸川さんなんてバツイチのくせに」 「んー……とりあえずさ、温泉どこ行くか決めようよ」 「あ、話変えた!」  塩見に鋭く指摘され、戸川は苦笑いをしながら煙草に火をつけた。少しづつ変わりはじめた塩見に戸川は戸惑いを感じることもあるが、素直に感情を表に出すようになった塩見が愛しくて堪らない。
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