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「シオちゃんの匂いがする」 「っ、やめてください! 変態か!」  戸川から枕を取りあげ、塩見はそれをベッド目掛けて放り投げた。汗くさくなかっただろうかと心配になり、塩見は思わず自分の肘あたりに鼻を近付ける。 「……臭くなかったですか?」 「ぜんぜん。いい匂い……っていうか、えろい匂いがした」 「……あのねえ」 「マジで。生々しい感じじゃなくて、フェロモン的な?」 「耳鼻科に行ったほうがいいですよ。フェロモンていうのは異性のものしか反応しないはずだし」 「んなことねぇよ」  戸川がずいっと塩見に顔を近付け、首すじに鼻を寄せてくる。 「ちょ、戸川さん」  高い鼻が塩見の首すじに触れ、吐息が肌をくすぐる。くすぐったさの中にぞわりと肌を刺激する快楽が混ざりこみ、塩見はそっと戸川の肩を押し返した。 「……僕のなにがいいんですか? 戸川さん、女の人好きでしょう?」  塩見にはよくわからなかった。戸川が3年前に結婚した相手は、当然女性である。離婚をしたのは半年前で、その半年の間に自分を好きになったのか、それともずっと前からそうだったのか、どちらにしても戸川に好かれる要素がどこにあったのだろうと、塩見は疑問で仕方ない。
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