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「だからさぁ、シオちゃんが例え女でも、付き合う前にこの子と結婚するかな? とか、子供出来たらいいななんて考えないでしょ?」 「でも、確実に出来るのと、確実に出来ないのとでは違うじゃないですか」 「そうだけど! そういうんじゃないんだよなぁ……そういうの抜きでシオちゃんと一緒にいたいっつうかさ……恋は衝動だろ?」  その衝動で過去に痛い目にあった塩見は苦笑いしか出てこない。そもそも『どこがいい』とか『なにがいい』とか聞くだけ野暮な話なのだ。戸川が言うように恋は衝動で、理由なんてものはぜんぶ後付けに過ぎない。ただひたすらに塩見は自分が傷付きたくない一心で、無駄な足掻きを繰り返しているだけだ。 「シオちゃんが俺と付き合いたくないのって、シオちゃんの性格? なんだっけ、H……」 「HSPですか」 「そう。それと、なんか関係あんの?」 「多少は」 「だったらシオちゃん、誰とも付き合わねぇの?」 「……そう、なりますかね」 「なんだよ、それ。俺のこと好きなくせに」  あーあとぼやいて戸川が水槽を振り返る。色とりどりのグッピーたちが舞うように泳いでいる中で、やはりブルーグラスは塩見に似ていると戸川は思う。 「シオちゃんは水槽の中なんだな」 「え?」 「この部屋が水槽みたいなもんでしょ」  
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