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 だとしたら、この部屋から連れ出せば塩見は死んでしまう。けれど様々な色のグッピーたちが同じ水槽で泳げるのだから、塩見だって誰かとは共存していけるはずだ。戸川はそう思い、塩見が自分と似ていると言っていたアイボリーモザイクを目で追った。 「……じゃあ、俺が水草とかだったらいいわけだ」 「え、いやいや、戸川さんが水草って」 「じゃあ……俺がシオちゃんの水槽になるよ。それならいい……って、え? どした?」  水槽になる。それは塩見が生きる場所になるという意味だ。塩見は、その言葉の意味を理解してじわりと目頭が熱くなる。 「シオちゃん?」 「っ、はは……あなたって人は……」  どこまで優しく懐が深いのだろうと、塩見は息が苦しくなる。戸川が水槽ならば、それはとてつもなく大きく頑丈で、きっと塩見はそこから脱出することが出来ない。けれど、水槽を失ってしまったら、水はなくなり呼吸が出来なくなり、塩見は死んでしまうのだ。  言葉のあやだとはわかっている。それでも塩見は想像せずにはいられない。戸川に愛され守られ、いつかそれを失ってしまったら――生きてはいけない。大袈裟ではなく、それくらいに塩見の心は脆いのだ。
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