3

2/7

196人が本棚に入れています
本棚に追加
/104ページ
 HSPとは。  ――高度な感覚処理感受性を持つ人のこと。産まれたときから幼少期に渡り説明のつかない体験を繰り返し、HSPではなく生まれた人より五感が鋭く、精密な中枢神経系を持ち、良い刺激にも、悪い刺激にも強く反応する感受性の強い人達――  画面の文字を見つめ、戸川は煙草に手を伸ばした。塩見がHSPでパニック障害だということは、担当編集になった時に塩見のほうから聞いている。その時は塩見が言った『超敏感で繊細な人』という簡単な説明を戸川は自分なりに『超神経質』と解釈したのだが、それはどうやら違うらしいと今さら気付く。 「戸川さん、ここ禁煙ですよ」    隣のデスクの後輩に嗜められ、戸川は火のついていない煙草を口に咥えぶらぶらとさせた。  気持ちは通じ合っているはずなのに、その前に立ちはだかる壁が塩見の性質のひとつであるHSPだとは……。  感受性が強く共感能力が高い。それは漫画家である塩見にとっては長所といえるだろう。現に塩見の描くものは、成人向けのエロ漫画といっても心理描写がひどく繊細で上品ですらある。  
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

196人が本棚に入れています
本棚に追加