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「押尾先生の出版記念パーティですか……」  一緒に夕食を食べようと塩見の部屋に押し掛け、出前の寿司が届いたところで戸川はパーティの件を塩見に打診してみた。案の定、塩見の表情は冴えない。 「シオちゃんはそういうの苦手だからって編集長に言ったんだけどさぁ……なんか知んねぇけど、押尾先生がシオちゃんに来てほしいらしくて」 「押尾先生って勇者のロンドを描いてる人ですよね?」 「そう。うちの看板作家。去年は映画化もされたしね」 「そんなすごい人がなんで僕なんか……」  押尾(おしお)(かなめ)は戸川が勤める『四つ葉出版社』からデビューし、現在はファンタジーアドベンチャー漫画『勇者のロンド』で若年層から絶大な支持を得ている。その押尾が全く面識がなく、尚且つジャンルも全く違う塩見に興味を持つというのは、通常ならあり得ない話だが、戸川にはなんとなくわかる気がするのだ。 「シオちゃんの描く漫画ってさ、エロにおさまりきらないところがあるんだよね」 「どういう意味ですか?」 「絵柄も綺麗だし、心理描写も繊細で、質のいい官能映画みたい。だから女性ファンも多いし、うちの後輩の鹿島ってやつもシオちゃんのファンだって」 「はぁ」 「興味が沸くんだろうよ。どんな人が描いてるのかな? って」  
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