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「ところで、どういう映画なんですか?」
「さあ? アクションもの?」
「さあ? って……観たかったんじゃないんですか?」
「言ったっしょ。シオちゃんと来たかったんだって」
チキンサンドを食べ終え、指についたソースを舐めながら戸川が塩見を見る。
「あの……ひとつ、聞いていいですか?」
「どうぞ」
「……これって……俗にいう、その……デートってやつですか?」
途切れ途切れに聞いてくる塩見を見て、戸川は一瞬目をまるくし、それから肩を震わせて笑いだす。
「わ、笑わないでくださいよ!」
「ふ、はは、ごめんごめん。そう。デートだよ」
上体を倒し、いまだ喉の奥でくつくつと笑う戸川に、塩見は顔が熱くなっていく。
「とりあえず俺は、シオちゃんといられればそれでいいから。いつだってデートだよ」
戸川の言う『いつだって』とは、塩見の部屋で食事をしたり、ネットショッピングをしたりすることも含まれているのだろう。優しくまるい感情が、戸川から伝わってくる。きっと戸川が水槽なら、それは四角い箱ではなく、まあるいフォルムの金魚鉢なんだろうと塩見は思う。
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