4

7/9
前へ
/104ページ
次へ
 戸川の指が塩見の耳に触れ、撫でるようにしながら、塩見の顔を上向かせる。視線がぶつかり塩見は、陸に打ち上げられた魚のように小さく喘いだ。戸川は、その吐息ごと食べてしまうかのように塩見の呼吸を奪い、開いた口の隙間に舌を割り込ませていく。 「っ、ん」  耳を塞ぐようにされ、塩見の鼓膜にガサガサとノイズが響く。映画の台詞はもうなにも聞こえてこなかった――。  
/104ページ

最初のコメントを投稿しよう!

199人が本棚に入れています
本棚に追加