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戸川の指が塩見の耳に触れ、撫でるようにしながら、塩見の顔を上向かせる。視線がぶつかり塩見は、陸に打ち上げられた魚のように小さく喘いだ。戸川は、その吐息ごと食べてしまうかのように塩見の呼吸を奪い、開いた口の隙間に舌を割り込ませていく。 「っ、ん」 耳を塞ぐようにされ、塩見の鼓膜にガサガサとノイズが響く。映画の台詞はもうなにも聞こえてこなかった――。
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