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「じゃあ、明日5時すぎに迎えに来るから」
出版記念パーティの前日、約束通り戸川は塩見にスーツを届けに来た。
「わかりました。あの……コーヒーでも飲んでいきますか?」
「いいの?」
「逆にどうしたんですか。いつも勝手にあがりこむくせに」
いつもなら、塩見が出てきた途端に勝手にあがりこむ戸川が、今日はまだ玄関口に立ったままでいる。
「いや、だって昨日もお邪魔したし。シオちゃん、嫌かなーって」
「もう慣れました。でも、コーヒーしか出てきませんよ?」
軽口を叩いて塩見がキッチンへと向かう。戸川は部屋にあがりこみ、いつものように水槽の前に座ると、テーブルの上に灰皿が置いてあるのを見て勢いよく塩見を振り返った。
「シオちゃん!」
「なんですか、大きな声をだして」
「これ! 灰皿、用意してくれたの?」
「あぁ……ネットでたまたまかわいいのがあったから」
塩見は『たまたま』と言うが、検索しなければ灰皿なんて偶然目に入るものではない。ガラス製の星型の灰皿。これを塩見が『わざわざ』購入してくれたことが、戸川は嬉しくて堪らなかった。
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