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 ――この漫画を読んで自分もがんばってみようかなと思いました。(20代女性)  ――私もパニック障害です。戸川さんという良き理解者に出会えたシオちゃんが羨ましい。私も今度、水族館に行ってみようかな。(30代女性)  ――HSPというものを初めて知りました。障害や病気ではないのですね。それでも繊細すぎるが故に生き辛いとは……勉強になります。(30代男性)  こういった共感や興味、理解を示すコメントの多さに塩見は驚き、そして救われたような気分だった。戸川は塩見が描くことで救われる人がいると言っていたが、それは塩見のほうも同じだったのだ。自分を知ってもらうこと。そして理解を得ること。たったそれだけのことが、こんなにも嬉しく、心の支えになろうとは数ヶ月前の塩見には予想も出来ないことだった。  だから、苦手な電車にも挑戦してみようという気持ちになれる。うまくいってもいかなくても、そのことをまた漫画に描けば誰かの救いとなれる。その想いが塩見の足を動かす。  改札を抜けホームで電車を待つ間、塩見は夏の空を見上げていた。抜けるような青、もくもくとした真っ白な入道雲。きっと戸川が心配しながら待っている。そう思うと、塩見の顔には自然と笑みが浮かび、ほんの一瞬だけ涼やかな風が通りすぎた気がした。
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