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「シオちゃん!」  四つ葉出版社、編集部。塩見が現れるや否や戸川は大きな音をたてて椅子から立ち上がり、まるで子を心配する親のような顔で駆けてきた。 「大丈夫だった!?」 「……そんなに心配するくらいなら、忘れものなんかしないでくださいよ」  塩見が出版社へと出向いたのは、戸川の忘れものが原因だ。 「悪い。でも携帯ないと仕事出来ないから」 「暑いし、電車は緊張するし……まぁ、漫画のネタにはなりそうですけど」 「乗れたんだ? とりあえず中入って、なんか飲んでいきな」  塩見の腕を取り戸川が中へと誘導する。突然現れた塩見に、他の社員は興味津々といった様子だ。 「座って。なに飲む?」 「あ、俺アイスコーヒーお願いしまーす」  戸川の隣のデスク、後輩の鹿島が便乗するように声を張り上げる。 「おまえには聞いてねぇよ」 「なんすか。シオちゃん先生くるまで、そわそわしてぜーんぜん仕事しなかったくせにぃ」 「あー、わかったわかった、アイスコーヒーな。シオちゃんも同じでいい?」 「はい」  戸川が去ると、さっそくといった感じで鹿島が塩見に肩を寄せてくる。
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