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「先生、担当変わんなくて良かったっすね」
「え?」
「あれっ? 聞いてないんすか? 塩見先生は一回も原稿落としたことないし、まぁ、その面倒なことも言わないから俺らからしたら扱いやすいっていうか……だから、戸川さんじゃなくて新人に任せてみようかって話があったんです」
そんな話は戸川からは聞いていない。
「でも、戸川さんがすげえ反対して……編集長とちょっと険悪な感じにもなってたんすけど、今の連載めっちゃ評判いいし、戸川さんありきの内容だからってことで……あ、戻ってきた」
戸川の姿を確認すると鹿島は塩見からパッと離れ、何事もなかったかのように仕事を続けた。
「こーすけ、おまえ今シオちゃんに近くなかった?」
「ないっす」
「あーそう。なら、いいけど……」
鹿島から思いもかけない話を聞いた塩見は、ざわざわと心臓が落ち着かなくなる。
「戸川さん」
「うん?」
「帰りにうち寄って?」
「え、あぁうん。でも、今日は遅くなるかも」
「遅くてもいいから、絶対。絶対」
塩見にシャツの袖を掴まれ、戸川は不覚にもきゅんとしながら大きく頷いた。
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