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「あれ? 智喜君から連絡? こんな内容……珍しいなぁ」
デパートで遊んで数週間後。
私と智喜君は連絡先を交換していた。
しかし、姉であるお友達とは違い智喜君からの連絡はたまに来ても漫画についての内容がほとんどでまるでお仕事の話をしているような感じだった。
そんな智喜君から、今日の帰りホームで待っています……それだけ書かれた内容が送られてきた。
それに対し私はいつものように、了解ですと返した。
「へー、智喜から連絡あったんだぁ……学校から帰ってくると直ぐにあいつ、部屋の中に引きこもってて出てこなかったから何をやってたのか知らないのよねぇ」
「思春期とか?」
「まっさかー、あいつ恋愛のれの字も知らないやつだよぉ?」
しかしその後、いつものようにツッコミのような言葉を放つ友達は何かに呆れたように小さく溜息をつくと席に戻ってしまった。
それに首を傾げながら私の方を向くと今日の授業内容について話を始めた。
そして放課後……私は部活ある二人とは別れ一人駅へと向かった。
普段より帰る人が少ない時間……と言ってもたまたまこうなってるだけな気もするけど、そう思いながら駅に着くと既に智喜君が待っていて、私に気づくと小走りで駆け寄り言った。
「あ、あの! 林檎さん! こ、これ! これ、見てください……」
何かの雑誌の切り抜きのような物を手渡され、私はそれに目を通す。
するとそこには…………新人賞、最優秀作品と書かれていた。
「へぇ! 凄いね! って言ってもどれだけ凄いのかちょっとわからないけど……あ、見てもいい?」
私の言葉に頷くのを確認すると先のあるページを捲る。
その内容、それは私が一番初めに拾い、一番初めに見たあの漫画……しかし、少しだけ変わっていた部分があった。
勇者と思い込んだ一人の男の子。
そんな男の子が村の外にいる魔物に対し木の棒で挑みに行くシーン。
前ならそのまま突撃するはずが、村にいた幼馴染の女の子。
この子もまた髪色は茶色でロングヘアー、泣きぼくろもあった。
「ヒロインこの前と一緒だねっ」
私は休みの日に見せて貰った物を思い出して微笑みながら言うと、恥ずかしそうに頷く。
それを覗きながら確認してから私は続きを読む。
その女の子は馬鹿にする他の村人達とは違い一人、心配し応援した。
その声援と絶対に生きて帰って来ると言う想いの元、男の子はまた少しずつ戦いを続けては負け、村に帰るを繰り返す。
その繰り返しのたびに女の子は泣くのを我慢しながら男の子を応援し励ました。
挫けないで。
頑張って。
どうか……死なないで。
その言葉に答えるように男の子は何度も何度も立ち上がり、魔物と戦い少しずつ強くなり、魔王に挑むところまで来た。
前は一人と魔王で何度も挑む男の子を応援するような魔王だったが今回は違っていた。
まるで本物の魔王が如く男の子を殺しにかかる。
しかし殺されそうになり……目を閉じようとした時、女の子のことを思い出して奮起し、また起き上がり挑みかかる。
何度も何度も死にかけ、目を閉じかけるが走馬灯のように思い出す女の子の想いと自分から想う思いの元、起き上がり一撃ずつ決め……ついに勝利する。
だが、その姿は満身創痍。
それでも体を奮い起こし、男の子は村で待っている女の子の元まで戻ると……男の子は持っていた武器、ボロボロの鎧を捨て女の子に言っ……そこまで読んだ直後、まるで読むタイミングがわかっていたかのように智喜君は漫画に描かれていた男の子と同じセリフを……私の眼をはっきりと見て言った。
「僕の傍にいてくれませんか?」
私を見て、私に対して放たれたその言葉。
そして私の返事を待つより早く彼は智喜君は私に言った。
「僕は林檎さんが好きです」
その言葉に私は……。
ここから先はまるであの時のお話と一緒。
彼の言葉にヒロインが何と答えたかは少し先の物語。
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