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本の落とし主を探す日々は急な進展は迎えていた。
それは寝て起きて次の日の帰りの駅。
学校帰りの女子制服だらけの中に一人、他の高校の制服を着た男子生徒が女子を見るわけでも、来る電車を待っているわけでもなくホームにある椅子やその下を探していたが、何かが見つからないのか近くにいる、またはその行動に笑っている女子生徒に話しかけようかと迷っていて、結局話しかけらない様子が見えた。
そして電車が着くとホームで待っていた女子生徒達は電車に乗る。
しかし……その男子生徒だけは乗らずホームを見つめた後、乗るのを待っている車掌さんに向かい首を横に振った。
その後、電車が出発したホームには探し物をしている男子生徒と……私だけがホームに残っていた。
「あのぉ……少し、いいですか?」
もう一度探そうとホームにしゃがみ椅子の下を覗き込もうとしている男子生徒に私はしゃがみ話しかけた。
「え?! あ、えっと……は、はい! なな、なんでしょうか?」
明らかに動揺しているのがわかるほど、目が泳いでいた。
しかし私はそれを馬鹿にすることも笑うこともなく話を続けた。
「もしかして……探し物……落とし物は、これですか?」
「ぁ……! そそ、そう! それです!」
私が鞄から取り出し両手で持ち目の前に差し出したあの ノートに男子生徒は嬉しそうに受け取り微笑んでいた。
「そうですか、それなら良かったです……それでその……表、裏にも名前が書かれていなかったので……中を見ちゃったんです」
「え……あ……」
私の言葉に男子生徒は顔を真っ赤にして下を向いた。
そんな男子生徒に対して私は笑顔でこう言った。
「その漫画……面白かったですよ、特に魔王に何度も挑む勇者がかっこーー」
そこまで私が言いかけた時、男子生徒は嬉しそうに顔を上げ、急に話始めた。
「本当ですか?! あの部分は一番頑張って頑張って書いたところなんです! あの諦めない感じがとても好きで他にもこことか、あとここも!」
自分の書いた漫画が人に褒められたのが嬉しかったのか男子生徒は笑顔で漫画のページを次々に捲り私に対して話しかける。
それに対し私は笑顔で話を聴き、頷いていた。
そして喋り終わると同時に今さっきまで話をしていた自分自身を思い出してまた顔を真っ赤にして下を向く。
「あれぇ、林檎っち、また私達を待っててくれたの?!」
「またって今日は部活早く終わっただけでしょ……」
友達の二人が背後に現れ、私と後ろを振り向き男子生徒は顔を上げる。
いつもなら、からかうように笑顔を浮かべて来る友達の一人が少し驚いた顔を一瞬した後、笑顔を浮かべて私に言った。
「やっぱりあの時の漫画、智喜のだったんだ!」
「知り合いなの?」
「知り合いも何も私の弟だもん」
友達は笑顔でそう答えると同時に弟と呼んだ男子生徒に近づくと少し離れた位置に連れてった。
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