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そして学校が休みの日、私は智喜君にごちそうして貰うため、大きなデパートがある駅に向かう電車に乗っていた。
その最中、姉とその友達、ようは私の友達二人の一緒だと言う連絡がきた。
その内容にお邪魔かもしれないけど……って書かれていたがよくわからなかった。
そんなやり取りをしながら駅に着くと三人は既に改札口の外で待っていたため駆け寄る。
しかし智喜君だけは赤い顔をして下を向いたままだった。
「さすが林檎っち、可愛い服着て来るねぇ! お姉ちゃん興奮しちゃう!」
「なんであんたが興奮してるのよ……女同士でしょ……」
いつも学校で見る漫才のような会話に微笑みながら三人と共にデパートに向かい歩き始めた。
「でさぁ、部活の…………」
「知ってる、あの子は……」
前を歩く友達二人は部活の話で盛り上がっていた。
しかし後ろを歩き付いて行く私と智喜君に会話はない。
何か会話しないとだめだよね……って思い話しかけようと顔を向けた直後、智喜君が何かを鞄から取り出し私に渡した。
「……? これはノート? これを見ればいいの?」
私の質問に智喜君は無言で頷いた。
歩いている人の邪魔にならない位置まで移動すると言われるがまま、私は渡されたノートのページを開く。
そこには前に見た漫画とは違う内容の漫画が描かれていた。
「……主人公は男の子、この子がヒロインかな?」
私の言葉に智喜君は無言で頷く。
それを確認した私はノートのページをゆっくりと開いて行く。
その内容は一人の男の子がある日出会った女の子に一目惚れし、片思いから始まる恋愛物だった。
ヒロインと言った女の子の外見は茶色のロングの髪、片方の目の下には泣きぼくろ。
主人公である男の子に優しく手を伸ばしたりと名も無きキャラクター達とは違い常に男の子に対し笑顔を浮かべていた。
そして男の子の告白で幕を下ろす……。
しかしその次のページは無く、ヒロインの子からの返事は描かれていなかった。
「これは……ここで終わりなの? 続きはまた描いたりするのかな?」
「描ければいいなぁ」
少し寂しそうに答える智喜君に私は少し首を傾げながらノートを渡しながら思ったことを言った。
「こんなに絵とお話が上手なら賞? に応募したらいいのに」
それに智喜君はノートを大事そうに抱えながら私の眼を見て言った。
「賞を……新人賞を……取ったら……そ、その……あ、あの……」
「新人賞? あ、漫画の? もしも取ったら? そうだねぇ……今度は私が何かお祝いしてあげるね!」
何かを言いたそうな言葉を勝手に解釈した私は笑顔でそう答えた。
すると智喜君は嬉しそうに頷き、ノートを鞄にしまうとデパートに向かい歩いて行った。
それを追いかけ私と三人は一緒にデパートで食事と買い物をして別れた。
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