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「わかりました」
梨歌はカチャリと受話器を置く。「あと10分だって」と彼女は言った。
フリータイムに延長はない。この時間はもうすぐ終わる。
「楽しい時間ってなんでこんなに早く過ぎるんだろうね。相対性理論め」
「いやマジでそれな」
――そう、楽しかった。
最初から最後まで、昔と変わらず楽しかった。
正直最初は少し不安だったんだ。会わないうちに変わってるんじゃないかって。
でも、オレたちは何も変わっていなかった。
つまりオレの気持ちも、昔と変わっていないということだった。
「最後の曲、入れてよ」
テーブルの上にあるリモコンを指差して「憶えてる?」と梨歌は言う。
オレは手を伸ばして、それを持ち上げた。
次の曲を入れれば今日が終わる。
その前にオレは伝えなきゃいけない。
今日はそのために彼女を呼び出したんだから。
それなのに。
オレの指は曲名検索のボタンを押していた。
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