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「ぎゃー懐かしい! カラオケ久しぶり!」  狭いカラオケルームの扉を開け、固いソファに鞄を置きながら梨歌は言った。 「え、行ってねーの? カラオケ大好き人間の梨歌が?」 「ヒトカラは行くけどね。友達にカラオケ好きがいなくてさあ。誰かと来たの久しぶり」 「あー確かにオレもだわ」 「お、マジ?」 「マジマジ。メンチカツ好きの友達ならいるけど」 「種別ちがくない?」  彼女はジンジャーエールの入ったプラコップを机に置いて、リモコンのタッチパネルを操作する。少しのタイムラグの後、曲が流れだす。 「わたしたちと言ったらこれだよね」  懐かしいメロディーが大音量で流れだす。  梨歌とカラオケに行くと一曲目はいつもこの曲だった。  中学のクラスでオレたち以外誰も知らなかったマイナーバンド『バートレット』の、前奏の長い青春ソング。  彼女はマイクのスイッチを入れた。
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