気怠い夕方

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「アンフィスは元々もっと笑う奴だったよ。たぶん今のように寡黙になったのは、4年前からだ。君はまだいなかったな、フゥル」  フゥルがFDCに入社したのは3年前だ。それ以前のことは何も知らない。大体が自分のこと以外興味のない人間だったので、今も知らないことの方が多いだろう。 「その頃までは今とは制度も違って、ファイト方法に団体戦があったりした。ランキングがわかりづらくなるから廃止になったが。リトル・ドラゴンも今よりもっと性能が悪かった。耐久性が良くなかったんだ。 その上サラマンダも開発されていなかったからゴム性の弾丸を使っていた。ゴムといっても、実弾と同じように発射すれば中々の威力だ。大量に撃ち込んだり、当てどころを選んだり、同じところに当て続ければ機体を破壊できた。私も1度、墜としたたことがある。 あれは、中々、衝撃だった」  コーヒーを飲むウィルモットの姿は静かだが、張り詰めた何かを感じた。 「アンフィスには親友がいたんだ。とても仲が良かった。彼は元々饒舌ではなかったが、その友人といる時だけ心を開いているようだった。私が聞いたのは、以前から同じ軍の部隊に配属されていて、一緒に引き抜かれた、ということだった。共に訓練した友だからか、実力は群を抜いていたし、息もぴったり合っていて、団体戦で同じチームになった時など、美しさすら覚えるフライトだった」
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