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外を眺めるといつの間にか雨が降っていた。しとしとと細かく小さな雨。まだ陽が昇っているはずなのに、いやに暗く感じた。
「最後のファイトはよく覚えている。個人戦だった。アンフィスと彼が同じファイトの対戦相手だった。2人以外の人間が徒党を組んで、2人をまず墜とそうと企んだ。それを事前に知った彼は首謀者に詰め寄った。そのせいで、逆上した相手はファイト前に、彼の腹を刺した。
無情にもファイトは始まって、腹に大怪我を負った彼は力が出せず、集中砲火を浴びて最下位になった。何も知らないアンフィスはいつも通り闘い1位になった。
そう、今と1番違う制度は、最下位を処刑するのは、そのファイトで1位になった者ということだ。
アンフィスは、自分のリトル・ドラゴンで彼を撃ち殺したんだよ。
いや、もしかしたら違うかもしれない。処刑の時には、彼はもう、事切れていたように見えたからね。
だが、アンフィスは彼を撃った。
それだけは、確かだ」
ウィルモットのコーヒーを見ながら、自分も何か飲みたいとフゥルは思った。喉がカラカラで、痛いほどだった。
『死ぬことはない。それがお前の心の隙だ』
アンフィスの言葉が思い出された。
人は簡単に死ぬ。ましてや、自分たちが操縦しているのは兵器で、相手もまた、兵器をむけてきているのだ。
生も死も、いつも横を飛んでいて、時折目の前を通り過ぎる。通り過ぎた後、降り立つのは自分か、相手か。
アンフィスはそう感じながら、飛んできたのかもしれない。
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