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何ら変わらない昼
彼の所属するFDCは航空業を主幹としている政府お抱えの大企業だ。850人程のパイロットを所有し、その航空ショーで人気を博している。
FDCの技術の根幹はドラゴンの身体と、身体が死しても尚保ち続ける魔力による。
キャノピィはドラゴンが6つ持つ眼の角膜を使っている。高速で空を飛ぶドラゴンの眼を守る角膜は厚く、硬く、軽い。
エンジンはドラゴンの鱗の魔力を物理的にエネルギーに変換する装置を搭載している。今までより馬力がある上に、小さく軽い。
燃料補給は必要なく、燃料切れになることがない。粉々に破壊されるまで半永久的に動力は生き続ける。さらに前進するだけでなく、その場で停止することができるのが特徴だ。その特徴を活かして通常の戦闘機とは異なり、停止と前進を繰り返す不可思議な動きをする。
そうして余分なものを削ぎ落とし、世界一小さく軽く速い戦闘機が出来上がったが、2回の世界大戦、相次ぐウイルス性感染症の流行、水や食糧不足による飢饉によって世界は戦争をする余裕をなくし、図らずも平和になっていた。
リトル・ドラゴンの活躍の場は、どこにもなかった。
そこでFDCが取った行動は誰にも想像できないものだった。
小さな国を買い取り、そこをFDCの治安国家としたのである。
犯罪歴がない者か、一定以上の金を持っていれば誰でもがその国に住まうことができるようにした。
さらにFDCは驚くべき早さで街を整備して標準より高い水準の生活を送るために必要な施設や娯楽場を作り上げた。また多くの高層住宅を建て、そこにどんどん富裕層を住まわせた。
次にしたのはパイロットの収集だった。職業パイロットの引き抜きはもちろん、各国で扱いが手に余っている犯罪者も買い取り、彼らを訓練した。
リトル・ドラゴンの良いところは、従来の戦闘機と違い、Gがほとんどかからないことにある。今までのパイロットは耐G能力を高く求められていた。そして、そこが大きな壁だった。その壁を、ドラゴンの魔力と高速に耐える角膜が乗り越えてくれたのだった。
パイロットは衣食住を保障され、丁重に放任された。地上で殺し合いさえしなければ、人並み以上の暮らしをすることができた。その評判を聞き、他国で生きることが困難な者ー貧困者や犯罪者がどんどん舞い込むようになった。パイロットの補充には不自由しなくなった。
そうやってFDCの基盤が出来上がった。
そこでようやくFDCは、航空ショー“ドラゴン・ファイト”を開催した。
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