何ら変わらない昼

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 ショーは毎週土曜日の夜19時から1時間行われる。場所は街中。富裕層が暮らす高層住宅街が舞台となる。  住宅街の建物はドラゴンの魔力を活用したシールドが張られ、リトル・ドラゴンの銃弾や、リトル・ドラゴン自体がぶつかっても被害がないよう完璧に守られている。  住民は、家の中から間近でファイトを楽しむことができる。臨場感たっぷり、安全保障付きの最高アトラクションだ。住民でなくとも高額のチケットを購入すれば、専用観覧席からファイトを観戦できる。  ファイトに参戦するのはランダムに選出された10人のFDCお抱えパイロット。希望者がいれば4人まで、選出者に加えて参加できる。それぞれリトル・ドラゴンに乗り込み、個人戦を行う。  本物の銃弾は使わない。戦闘機が希少で、破壊された場合替えがきかないからだ。その代わりヒカリモエギタケの粘着力を利用したシール性の銃弾“サラマンダ”を使用し、1時間のファイトの後機体に貼り付いた銃弾数でランキングがつけられる。  最も銃弾数が少ないものからランキングをつけられ、それに応じた報酬がパイロットには支払われる。撃墜数も同時に計測され、報酬に上乗せされる。その報酬目当てに、パイロットは激戦を繰り広げるのだ。  報酬だけではなく、強者のパイロットは観客からの人気が集中する。国を越えてテレビ番組の出演依頼が来たり、グッズが販売されることもある。まるでアイドル扱いだ。  ただし、ファイト毎に敗者が出る。ファイトでランキングが最下位だった者は、公開処刑される。処刑方法は基本、本物の銃弾を搭載したリトル・ドラゴンによる銃殺だが、国家予算程の金を積めば処刑方法の選択権を買うこともできる。  平和に膿んだ世界で、金持ちたちはむしろファイトよりも、その公開処刑を楽しんでいるのだった。  パイロット数は850人。月に4度のファイトで最低40人が参加する。ランダムに全員が満遍なくファイトに参加するようコンピューターがパイロットを選び出すため、1度生き延びれば最高21ヶ月は命が保証される。  21ヶ月を生きるために、ファイト中の殺与奪の権利をFDCに委ねる内容の書類に署名させられても、パイロット志望者は後を立たない。
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