何ら変わらない昼

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 パイロットには、現在10数名のエースがいる。累計のサラマンダ・ポイントの高い者や継続年数の多い者がそう呼ばれる。  サラマンダ・ポイントとは(自機が他機に与えたポイント−他機に与えられたポイント)×ファイト数で計算される。撃墜(実際機体を墜とさなくてもFDCではそう呼ばれる)数を稼ぐか、逃げ足早く飛び回るか、そのどちらかをしながらファイト数を伸ばすとランキング上位に食い込める仕組みだ。  ランキング10位までのエースの入れ替わりは激しい。1人死ねば、すぐにランキングは大きく変動する。しかしFDCがドラゴン・ファイトを始めて6年余りになるが、トップエースはずっと変わらない。  それが、アンフィスだった。  撃墜数も被撃墜数も群を抜いて高い。エース達は人気の高さから例外的にファイト数が増やされる。選出者の面子を見て考慮した運営側から希望者枠に勝手に組み込まれることもある。  普通なら1〜2年に1度のファイトも、彼らは3ヶ月に1度ほどの割合でこなす。アンフィスはそうした条件の中6年間、常にトップの座に居続けたのである。  彼がファイトに出場する時は観客数が3倍近くになる。FDCとしても彼を重宝している。  しかしそれをよく思わないものが中にはいる。他のエース達だ。フゥルもその1人となる。特別待遇のアンフィスを蹴落としてやろうと息巻いているが、当の本人は気にする風もなく淡々とファイトをこなしている。それがさらに気に食わない。  アンフィスは、常に独りだった。
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