何ら変わらない昼

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 もちろん簡単なわけではない。速さと操縦技術と、1番大事なタイミングを見極めるセンス。これらが合わさって初めてできる。 「上かっ」  アンフィスが頭上を取ろうとしていることに気づき、フゥルは機首を上げた。上を取った方が有利なのはセオリーだ。  しかしフゥルの上を取り返そうとする動きに、アンフィスはあっさり負けた。わざとそうしたのだと気づいた時にはターンしていて下から背後を取られた。  連なる銃声。  避けたが、1発掠めた。  まだ機体は生きている。フゥルは機首を返して反転した。アンフィスは先程の上昇動作を利用して今は上にいる。なんとか位置取りの形勢を逆転させたいとフゥルはビルを使って飛び回った。しかしアンフィスはぴたりと上空背後の優勢を崩さない。  ビル群が迷路に思えた。出口の見えない入り組んだ闇。そう感じたのは初めてだった。ふっと短く息を吐く。気持ちで負けてどうする。フゥルは切り替える。  一際高い円柱のFDC本社タワーが見えた。フゥルはタワーの孤に沿って下から上へと飛ぶ。アンフィスもその後ろについてきた。歯を食いしばる。速度を上げた。Gなどかかっていないのに少し身体が重い。  アンフィスの機体が見えなくなった瞬間機首を上げた。さらに速度を上げる。実際にやったら機体がもたないかもしれない。そう思いながら限界速度以上を出す。  アンフィスが同じ高さで飛んでいたなら上を取れるはずだった。しかしいくら回転しても機体が見えない。  銃声が聞こえた。  下にいるはずのアンフィスが上を飛んでいた。  なぜ。  そう思った瞬間、機体が墜ちた。
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