FLOWERS for ALGERNON

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土曜日、学校が終わった後、彼と谷口が所属する坂の上の少年野球チームの最後の試合を観に行った。対戦相手は、以前僕が所属していた坂の下の少年野球チームだった。坂の上のチームのピッチャーは谷口で、彼がキャッチャーだった。 僕は、どこか裏切り者のようだった。坂の下のチームの三塁手、菅野がこちらを怪訝そうな顔で見ていた。無理もない。「菅野!エラーしろ!」なんて叫びながら、坂の上のチームを応援していたからだ。ちなみに菅野は、小学三年生の頃までは僕の親友だった。もっとも、向こうはそう思っていなかったかもしれないが。 今となっては、どちらが勝ったかは覚えていない。ただ、月曜日、僕は学校で鼻高々だった。谷口が彼に「大野くらいじゃない、坂の上の小学校の俺たちと仲良くしてるの?」なんて言い、彼と話していたから、なかなかいい気分だった。 「他の奴らは、俺たちに話しかけてこないもんな」 「ほんとだな」 その時、「だって大野、坂の下の小学校で嫌われてたもん」という声が聞こえてきて、思わず机の角に頭をぶつけそうになった。 『あ? ひがんでんじゃねーよ』と、胸のざわめきを無理に押さえつけた。そもそも、坂の下の小学校で何かを感じさせてくれる奴にお目にかかったことはないね。あきれるよ。 まあ、簡単に言うと、二人と仲がいいことが自慢だったってわけだ。 とは別に、坂の下の小学校の生徒の中で、心から信頼していたのは永井だった。小学校5年から6年にかけて、僕は永井と夜を徹して遊んでいた。内藤も一緒だったけど、夕方5時になると帰る奴だった。田端も夜まで一緒にいたが、おばあちゃんから『大野は悪い子だから遊ぶな』と警告されたらしく、途中から来なくなった。 もう一人、渡辺という奴もいたが、どこかに引っ越してしまった。 永井は僕と同じF組で、同じ班だった。それなのに、どういうわけか中学ではほとんど話さなかった。僕が彼に夢中だったからかもしれない。 ある日、彼が学校を欠席していたとき、班で何かを決めなければならなかった。その時、鈴木(坂の下の小学校)という女の子が提案したことに対して、永井が言った。 「そんなこと、彼がやるはずないだろ、ああいう奴なんだから」 その口ぶりから、永井が彼をあまり好いていないことを察した。 次の日、僕はその話を彼に告げ口した。すると、彼は給食の時に永井に「大野から聞いたぞ」と言って、なんとなく気まずい雰囲気になった。永井は黙り込み、その隣で鈴木も黙り込んだ。ちなみに僕は彼の横で知ったり顔で微笑んでいた。 永井は僕のことをどう思ったのだろう……。
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