香る夜

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柔らかな薄絹に包まれて昇って行く。 誰かの手に引かれて…。 空の暗さが光に溶けて、 ああ、月へと向かっているのか。 「シュウ…シュウ」 誰かか俺を呼んでる。 手を引く人? 「そろそろ起きようよ。寝に来たの?」 鼻先にコーヒーの好い香り。 「ん、あぁ、コウさん…俺、寝てた?な。あーもう7時回ってるし…なんだかなぁ」 「って、こっちの台詞。まだ引きずってるの?失恋」 「うーン…いや、そもそも恋とか、その辺りに到達する以前の問題な気がする」 「そう?結構楽しそうに予定組んでたじゃない」 「ん、歴女だっていうし、城好き?4人で会って…」 「山梨とか行かなかった?2人で」 「行きました。あーもういい」 「はいはい。城かぁ。次は山城の紅葉狩とかにしようかなぁ」 「あれ?祭ですよね?」 「え?何言ってるの。シュウが月にしようって言ったくせに。今年の中秋の名月は1日だから、発行は前倒しして25日って言っただろ」 「あー、なんか聞いた気する。25日かぁ…頑張らせて頂きます」 「うんうん」
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