香る夜

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十五夜まで毎日通ってみようか。 同じ場所で月が満ちていくのを撮る。 今夜は地球照の抱く極々細い糸のような月が見えるか? そして、花は夜に香るのかもしれない。 小さな諏訪神社に手をあ合わせてから山を下りた。 昨夜の記憶…。 今日と重なる処が一つもなかった。 帰りにコウさんの所に寄る。 「で?夕べはどうだったの?」 「ん…空振りでした。今、また行ってみて満月まで毎日通おうかと…」 「それ、間に合うんだよね?」 「あー、…コウさん、やっぱり怒ってます?」 「別に。怒ってたらOKしないし。防災の方も見て来てよね」 「はい」 コウさんのデスクの端の積み重なった本が目に留まる。 かぐや伝説の本やパンフ。 月とかぐや姫…。 「かぐや姫って…」 「ああ、シュウのと直ぐに差し替えられるようにね」 「酷っ」 「この前、富士のかぐやセンターに行ってみたら、結構面白かったからさ」 「えぇ、いつ行ったんですか?誘ってくれなかったじゃないですか」 「秘密。ま、ちゃんとやってよ」 「頑張りますけど…」 秘密…。 昨夜の話はしなかった。
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