香る夜

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「月は秋。でも、僕は冬の月が好き。 切れそうに冷たい、深く透き通った静寂の空に浮かぶ冬の月が…」 肩越しに、コウさんは俺を慰めるみたいに呟く。 膨らんだ蕾から零れる香り。 満ちた月明かりを浴びて、その一瞬に咲く銀色の花。 抱き留めた掌には何も残ってはいない。 投影された幻。 時空の境界線。
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