うそうそ時

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翌朝、携帯の電源が切れてる時は、大抵機嫌が悪い。 コウさんは、取扱い注意の女子みたいな処がある。 気怠そうに門柱にもたれ掛かって居た。 「お、おはようございます。早くなかったですか?」 「どうせどっかの神社行くんだろ?運転するからナビ入れて」 「すみません。どうせ…ですけど」 「いや、横乗ってると酔いそう」 「飲みでした?」 「でした」 助手席で俺は、御朱印女子から聞いた話をした。 案の定、コウさんは「ふぅん」とつまらなそうに応える。 食い付いて来たのは、三柱鳥居と日没1時間前という処。 この人の反応はやっぱり変わってる。 山道の途中で車を停めた。 「此処、登るの?あー、おんぶして貰いたい」 「や、それはご容赦下さい」 「なんで此処?」 「地図にもガイドブックにも載ってない人気の神社ってどんなかと…」 「あのさ、全国に何万あると思ってる?女子絡みの下心?」 「いやいや、純粋な興味」 「純粋ねぇ。あー休憩したい」 「まだ5分と歩いてませんから」 緩やかにカーブする山道。 杉木立の間から、時折対岸のなだらかな山並が見え隠れしている。 のろのろと無口になって歩くコウさんの背中を押しながら、漸く階段の前に辿り着いた。 丸太木を埋め込んだ段々が真っ直ぐ上まで続いている。深い溜息をつくコウさんと上を見上げると、3、4人の女子が降りて来た。 その後も、1人、2人とすれ違う。 140段余りの階段を登り切り、漸く鳥居に辿り着いて一礼したコウさんは、徐にうんざりした顔をした。 10人余の女子が整然と並んでいた。
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