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城内を一周、ゆっくり歩いた。
富士山が、手を伸ばせば届きそうな先に綺麗に見えた。
空の色が、神職の袴の色と重なる。
秋は空が澄んで綺麗だ。
背中の方から、ススキが風に揺れる音が小さな波音のように聞こえて来る。
「気持ちいい。シュウに誘われた割には、朝から有意義だったなぁ」
コウさんは、大きく伸びをすると笑った。
「それはどうも。お気に召して頂いて」
「あ、今日の日没…」
「え?日没?えーと、16時51分」
「戻るのは無理か。シュウ、新春号は御朱印でいいい」
「え?いいんですか?なんか、嬉しいかも。来年は俺も御朱印巡りしようかな」
「それは、まぁ、好きにすれば。あ、一緒には巡らないから」
「今、馬鹿にしたでしょう?」
「してない。それよか、きっちりとやって」
「頑張ります」
思いの他、コウさんのご機嫌は良かった。
「…経済効果はともかく、元来納経印だったものをスタンプラリー的な…」
とか言ってたのに、何が、何処がストライクゾーンだったのだろう?
それに、子狐に迎えに。とはどういう意味?全くあの人の考えていることはわからない。
そんなことを思いながら日が過ぎ、
次の週末は、再び保志乃合神社を訪れ、近隣の神社をリサーチしながら、マップを作る。
市内だけでも、相当数の神社がある。誰彼にも信仰心は根付いているものなのだろう。
ただ、気づかないだけ…。
コウさんとはすれ違いの日が過ぎていた。
金曜日の夜。家の前を通ると、作業服姿の男が出て行く処だった。
「おぉ、シュウ、丁度いい。寄って」
コウさんが手招きをした。
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