うそうそ時

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ビニールシートの上に、あの狐が置かれていた。 「え?どうしたんですか?」 「引き受けた。少し面倒だったけど、漸く今日連れ来たの」 「さっきの人に…直して貰うんですか?」 「だって、このままじゃ歩けないじゃん」 「自費?」 「え?慈悲?あ、金?まぁ、プラス広告掲載かな」 「なんでまた…」 「あれからつらつら考えるに、この子が宝物じゃないかと思ってさ」 「宝物?」 「写真撮ってプリントして。明日は早いよ」 「ええ?言ってる意味が全然わかりませんけど」 「ふぅん…助手のくせに、鈍いな」 「どうせ」 大体が分かりにくい人なのに、以心伝心みたくいくかよ。 「8時半には取りに来るから、出発は6時。OK?」 「OK…です」 言われるままに翌朝になる。 「神使の狐が持っている物は色々あるけど、稲穂、巻物、鍵、玉。僕が話したテンは首から鍵を下げていたし、長い髪の髪飾りは稲穂だった」 「じゃ、アカリ様は巻物か玉…え?」 「そう、やっとわかったか。玉は宝。三人が探しているのは、あの子狐じゃないかってこと。台座のサイズもぴったりだったし…さしずめ、ハルかアオか…」 「コウさん…」 「何?」 「鳥肌が…俺…やっぱ憑いてます?スワハラのなんか…それに、コウさんって…どういう思考回路なんですかね。なんでそんなこと思いつくんだか…鳥肌はコウさんかも…」」 「ま、シュウも同じなんじゃん?声が聞こえたとか、幻を見たとか色々…さ」 コウさんはそう言って笑う。 先週二度も来て、俺は何に気づくこともなかった。 コウさんの閃きと推察に驚きと納得しながら、心なしか、足取りの軽いコウさんにこそ、何か憑いてるのじゃないかと思う。 朝の森は、しんとして、時折鳥のさえずりが聞こえ、冷えた空気がゆっくり溶けていくようで気持ちが良い。 無言のまま、階段を登り切り、鳥居の前で一礼すると、コウさんは真っ直ぐ三柱鳥居の方へ歩き出した。 まるで、其処に三人が居るのがわかっているかのように。 三本の鳥居を囲んで、白装束の人、というより白いものがぼぉっと立っているように見えた。 思わず、コウさんの腕を掴む。 濡れ落葉を踏む音がザワザワと響いて聞こえた。
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