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もう上から降りて来る人も居ない。
日没1時間前が迫っていた。
階段を漸く登りきると、真っ直ぐ三柱鳥居の前まで行き、箱を開けた。
真ん中の台座に白い子狐をそっと大事そうに置く。
ずっと前から其処に在ったように。
「帰って来れて良かったですね。貴方が戻られる日を長い間待ってらした」
そう言ってコウさんは子狐をそっと撫でた。
正面に見て手を合わせて、何をかを祈ると「帰えろうか」と言った。
「えっ?社務所寄らないんですか?」
「うん」
「俺なら、色々いっぱい願い事して、御朱印3000枚分くらいのご利益にあやかるのに」
「不純」
「どうせ、不純ですよ」
そう言いながら鳥居の前で一礼した時、社務所に向かって走る、あの三人の誰でもない白い姿が小さな光と共に目の端を横切って行った。
「コウさん、今…」
「ん?うそうそ時だから…ねっ」
コウさんはそう言って微笑んた。
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