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うそうそ時…
昼と夜のその境目。
やがて、茜紫色がすうっと糸を引くように夜色に吸い込まれる。
軽くなった木箱を抱きしめながら、コウさんと見た景色を想う。
春、池に散る桜。
夏、宵闇に立つ香り。
秋、月の道を行く狐。
其処にはいつも目に見えない、耳に聞こえない、手に触れられない境界線が在った。
この、魅力的な遠い瞳をした不思議なコウさんと巡る新しい季節。
境界線の向こうに、どんな冬の景色が広がっているのだろう。
ひひの入ったひと粒の光を握り締めて…。
「シュウッ、置いてくよぉ」
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