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探偵とスキャンダル ~6~
今度は山を下り、ホテル佐々木に向かった。そこは探偵の友達の父親が支配人を務める超一流ホテルで、一度探偵と泊まったことがある。
ホテルに着くと、探偵は友達の佐々木真以奈ちゃんを呼び出し、青砥さんのときと同じように事情を説明した。
「悪いけど、心当たりはない」
「見てもない?」
「まったく」
「そっか……」
探偵はため息をついた。やっぱりここでも、という感じだった。
ところが。
「あっ」
真以奈ちゃんは何か思い出したように声を出した。
「何? 真以奈」
探偵は真以奈ちゃんに詰め寄った。
「緑川さんは見ていなんだけど、一、二週間前ぐらいに記者が来た」
「記者?」
「うん。緑川綾子さんのことを何か知りませんかって」
俺と探偵は顔を見合わせた。もしかしたら追っているライターかもしれない。
「どこの記者だったか覚えてる?」
「すぐ追い払っちゃったから顔は覚えてない。でも、もしかしたらロビーの防犯カメラの映像に残ってるかも」
そう言うと、真以奈ちゃんはカウンターの奥に消えて、少しするとタブレット端末を持って戻ってきた。
そこに映っている映像にはロビーの真ん中に真以奈ちゃんと背の高い黒っぽい服を着た男が写っていた。まあまあ遠いが、何となく顔は判別できる。鼻が高めでスマートな印象だ。
「名前は?」
「確か、そのとき貰ったのが」
そう言うと、真以奈ちゃんは制服のジャケットの内ポケットに手を突っ込み、一枚の名刺を出した。
「蓮見春樹。フリーライターだって」
真以奈ちゃんは良かったらあげるよ、と探偵に名刺を渡した。
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